COLUMNコラム

2023.4.20

山形から世界へ ! 循環型社会を目指す「山形モデル」の挑戦

 

山形県上山市において、世界初となる鶏糞バイオマスを活用したアクアポニックスプラント、通称山形モデルがいよいよ本格始動する。
食料
問題やエネルギー問題が世界中で取り沙汰される中、資源を効率的に利用する持続可能な循環型社会を山形から作り上げていこうという本プロジェクト。タッグを組んだ株式会社JFRの代表・宮崎博氏弊社代表・佐藤が、その意義と展望を語った。

両社の出会い

株式会社IGNITION代表  佐藤吏(以下、佐藤) : 当時、弊社は高麗9の販売とアクアポニックス事業を開始したばかりでした。しかし、日本や世界で発生している食料問題やエネルギー問題、そして循環型社会の構想を宮崎先生から伺い、是非我々のアクアポニックスでお力添えしたいと思いました。また、宮崎先生が提唱する循環型社会のビジョンは、弊社の持続可能な社会の実現に向けた行動指針と一致しており、ご一緒することとなったのです。宮崎先生との出会いが、我々がSDGsへの取り組みを加速させる大きなきっかけとなりました。

当プロジェクト始動の背景

株式会社JFR代表 宮崎博(以下、宮崎) : 現在、世界は食料問題やエネルギー問題といった様々な課題に直面しており、大きな変革の時を迎えています。例えば、1900年代から飼料用リンの枯渇が進行し価格が高騰しているため、畜産業は大打撃を受けています。さらに、日本はリンの5割を中国から輸入し、飼料全体の9割も輸入に頼っていることから、世界情勢の変化が私たちの食生活に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。食肉や卵といった製品がスーパーマーケットの陳列棚から姿を消す可能性もあるのです。また、欧米や韓国では既に定着している大豆を用いたプラントミートの普及も、日本では遅れている状況です。

一方、エネルギー問題も深刻です。化石燃料の枯渇や地球温暖化を受け、世界各国で温室効果ガスの削減を目指す動きが高まっています。日本政府も2050年までにカーボンニュートラルを達成すると掲げてはいますが、具体的なソリューションを示すことはできていません。このような状況を見ると、従来の利益追求主義から、持続可能性を重視した倫理資本主義への転換が必要なのだと思います。そのためには、資源を効率的に利用し、持続可能な循環型社会を構築することが求められているのです。

こういった背景を受け、資源を効率的に利用する持続可能な循環型社会を構築することを目指し、その第一歩として、山形モデルのプロジェクトを始動させました。

 

日本における循環型社会実現の可能性

宮崎 : 日本の人口推移は2000年代から急減し、2100年ごろには6000万人ほどになると予測されています。また、世界人口も将来的には日本と同様に減少していくと考えられています。そこで、日本が科学技術を導入しながら、減少した人口において理想的な循環型社会を完成させることで、世界に先駆けて"未来を創造する国"としての立ち位置を示すことができるのではないかと考えています。そのためにも、私たちは日本初の循環型社会モデルを山形で実現し、この取り組みを国内外に発信したいと考えています。

山形モデルの循環型システム

宮崎 : 「山形モデル」は世界初の取り組みとして、鶏糞を活用したバイオマス発電を行い、その電力でアクアポニックスプラントを稼働している革新的なシステムです。空気中に放出したアンモニア含有ガスを硝酸に変えて、もう一度肥料化することで、循環型モデルを実現しています。このようなシステムが開発された背景には、リンと窒素を取り巻く諸問題があります。リンや窒素は肥料に欠かせない物質であり、食料生産に欠かせない存在です。しかし、リンの元となるリン鉱石は枯渇しており、今後安定して得ることができなくなります。一方、窒素は空気から製造できるため、必要に応じて大量に生産することが可能ですが、過剰な窒素が温室効果ガスとなって排出される問題が生じています。また、農業廃液に含まれるリンや窒素は、赤潮やアオコといった海洋汚染の原因の一つともなっています。

そこで我が社は、廃ガラスをリサイクルした発泡ガラスを用いて、リンや窒素を吸着させる仕組みを開発しました。この発泡ガラスは、バイオリアクターとしての機能とリン吸着としての機能を持ち、低コストで高効率な廃液処理装置です。山形モデルでは、この仕組みを用いて鶏糞から窒素肥料やリン肥料を再生成し、アクアポニックスに使用しています。

 

佐藤 : そして、弊社が導入するアクアポニックスは、地球に最も優しい農業である"循環型農業"を実現しています。その仕組みは

 

  • アクアポニックスで育つ魚の排泄物を
  • 微生物が分解し
  • 植物がそれを栄養素として吸収
  • 植物によって浄化された水が再び魚の水槽へ戻る

 

というものです。水を捨てず、農薬や化学肥料も使わない究極のエコ農業と言えるでしょう。
また、このアクアポニックスでは、錦鯉など高価値で出荷できる魚の養殖や、黒高麗人参など高価値作物の栽培を行っています。循環型モデルを広げる取り組みを、ボランティアでなくビジネスとして展開することで、大企業だけでなく様々な規模の企業が取り組める事業機会となるように提供していきます。

今後の展望

宮崎 : 私たちはこの取り組みを山形から日本各地へ、そして世界へ広めていきたいと考えています。循環型社会の実現にはオープンイノベーションが必要不可欠です。オープンイノベーションというものは、年齢も人種も性別も関係ありません。異なる産業や地域、経験を持つ人間が集まることで、より多くの気づきを得ることができます。大企業、中小企業、個人、日本、世界、様々な人が同じ船に乗って一緒に取り組んでいくことが重要だと思います。また、世代間を超えて議論を重ね、私たちが与えられたものの中で生きるのではなく、みんなで議論しながら未来を築いていきたいですね。

 

佐藤 :  そうですね。そのためにも、まずは知ることが必要です。四谷にオープンしたショールームが議論の場となり、オープンイノベーションへと繋がっていくことを期待しています。興味を持って頂いた方は、ぜひ一度、四谷のショールームへお越しください。

株式会社IGNITIONと株式会社JFRは、山形モデルを発端に日本の技術や地域資源を活かした循環型モデルを日本、そして世界に発信していきたいと考えています。今後も、世代間を超えた議論や協力を通じて、持続可能な社会の実現に向けて取り組みを推進していきます。

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