COLUMNコラム

2023.4.19

有機農法って綺麗事?

 

日本の現在の有機農法の作付面積割合「0.5%」

2050年までに25%まで拡大するという国際公約(みどりの食料システム戦略)は果てしなく困難な目標設定であることは容易に伺えます。しかしこれも考え方で、一部のユーザーにみで支持されていた「有機農法」という食料生産を今一度見直し、そして今後の持続可能な未来に向けての新たな取り組みの契機にすることが現時点での最適解のように思います。

そもそも有機農法は皆さんが想像するほど良い側面だけではありません。有機農法のラベルの取得には相応の手数料を必要とし、ただでさえ有機農法の課題である生産コストの高さに拍車をかけています。だからこそ健康志向の一部のユーザーのみが好んで選択していた、それが有機農法のイメージではないでしょうか

また有機農法自体も完全無農薬であるわけでもなく、認証規格次第では一部の農薬の使用が認められていたり、無農薬栽培とされながらもその生産過程における農薬の混入がないことの証明が困難だったりと、そもそも農薬・肥料の使用不使用によって有機農法を定義することに無理があるのです。

 

有機農法の必要性

それではなぜ有機農法に取り組まなければいけないかといえば、答えはただ一つ、「天然資源が枯渇しているから」というところに尽きます。特に化学肥料の使い方について見直すきっかけとして、私はこの果てしない25%という数値目標の存在意義があると思います。

ハーバーボッシュ法により空気中から簡単に窒素肥料の生成が可能となった結果、窒素の使いすぎが問題となっています。必要以上の窒素を使いすぎることで土壌バランスが崩れ、大気に放出された窒素が酸素と結びつくことでN2O(亜酸化窒素)となります。これは温室効果ガスの中でも特に温室効果が高いとされている物質で、CO2の300倍もの温室効果があります。

 

リンの枯渇

リン鉱石の枯渇も止まりません。年々増加するリンの需要の増加に供給が間に合わなくなるピークリンが2030年代には迎えるとされていて、仮にリンが枯渇した際には食料生産の高騰ではなく、食料の獲得ができない結末を迎えるといってもなんら大げさではありません。

 

 

 

一方で化学肥料の存在が急激に増加する人口を支えているのも事実です。ゆえに闇雲に環境保護の観点から有機農法を推進するのではなく、食料生産効率と天然資源の保護を同時に達成するような技術開発も併せて進めていくべきです。その技術の確立こそが現時点での急務であるといえます。

また日本特有の問題として少子高齢化があります。第一次産業の中でも農業は労働力に対して収益性が低く、その結果農業従事者は年々減少の一途を辿っています。しかし我々の生活の基盤となっているのは第一次産業であって、この従事者がこれ以上減少することのないように、経済面からも第一次産業のあり方を見直さなければなりません。

 

農業のあり方が変わっていく

この観点から言えば、農業をより稼げるモデルにするどのように付加価値をつけていけるかが鍵になってきます。例えばワインが付加価値を用いた高収益農業モデルとしてイメージしやすいでしょう。歴史やストーリーテリングを通じて、単なるブドウがダイヤモンドと同等の価値を持つのです。特に今後外貨の獲得が求められる日本においては、やらない理由はないと言えるでしょう。

気候変動対策やSDGsへの取り組みの加速など環境問題に対する機運が高まっている今、これをきっかけとしてどのように付加価値を高め、高収益の産業を生み出すことができるかどうかが、環境保護の観点のみならず、デフレ経済の脱却の観点からも取り組む意義があるのではないでしょうか。

ここまでマクロな視点で展開してきましたが、まずは個人の取り組みをどのように広げていくかが重要です。今後予期せぬ国際情勢の変化や気候変動に備えるためにも、最低限自分の周囲の食料は自分で作れるような生活の在り方があっても良いと思います。少なくとも自分の家族、会社、コミュニティだけは自分たちで身を守れるような姿勢を一人一人が持つことが、日本としてのレジリエンス(耐久力)を生み、それが結果的に環境保護に繋がるような未来を構築していきましょう。

 

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